医療業界では電子カルテを中核に情報連携や業務効率化が図られ、地域医療や包括ケア、チーム医療などが必要不可欠になっています。しかし、各医療分野の専門性や、法令・診療報酬などの改訂対応、組織体制の違いなど課題も少なくなく、さまざまなシステムに改善の余地があるのが現状です。「ゼロシステム株式会社」は、大手企業が参入する電子カルテなどの中核システムではなく、医療現場に特化してニッチな課題を掘り起こす“問題解決型システム”を提供しています。
大手IT企業のメディカル営業で活躍し、業界に精通していた同社代表の左迫間昭蔵さん。しかし、創業当初は取引のあった病院からさえも信用を得られず、無償でパソコンなどの保守管理を行うこともありました。それでも医師や技士など、現場の声に耳を傾け、透析業務支援システム「ZERO HD」の開発にこぎつけました。他にも、医療材料や医薬品を管理する物品管理システム「ZERO Supply」は、開発当初病院に常駐しより現場に寄り添ったシステムの開発を行いました。こうした実績によって徐々に医療機関からの信頼が高まり、“問題解決型のシステム開発”で成長を遂げています。また、患者が寝返りできないことでおこる「床擦れ(褥瘡=じょくそう)」は、病院内に褥瘡対策委員会の設置を義務づけられるなど、国の医療費抑制策の最重要課題となっています。同社では、医療関係者の声を基に、褥瘡発生防止と早期治療をサポートするシステム「ZERO Pulcer」の開発に成功。同製品は、床擦れの臨床学会である「日本褥瘡学会等」へのアプローチを重ねることで、全国の病院で導入が進んでいます。
医療現場で担当者に直接課題を聞くことで新たな医療情報システム需要を掘り起こし、技術力の蓄積や医療機関からの信頼獲得につなげてきました。加えて、システムの導入費用で医療機関に多くの負担をかけるのではなく、保守管理と製品の継続使用に重きを置いた「ストックビジネス」を展開することで、安定した収益や成長を実現しています。現在では、全国約150以上の医療機関で同社製品が使われており、日本の医療や医療現場の課題に同社が果たす役割の大きさを感じさせます。今後も医療機関に寄り添ったシステムを構築し、熊本から日本の医療現場が抱える課題の解決に取り組みたいと考えています。